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(無料記事)Blenderのスカルプトで必要なスムーズブラシの設定方法

Blenderのスカルプトモードではデフォルトのスムーズブラシは変な挙動だ。スムーズをかけるほど凹む、くぼむのだ。はっきり言って使い物にならない。だが「Blenderのスカルプトは使えない」と判断するのは早計だ。実は「正しく設定」することでスムーズブラシが実用的になる。この記事ではスムーズブラシの正しい設定方法を解説する。

大和 司

この設定でようやく私は「まともに面荒れを修正」できるようになりました。デフォルト設定では永遠にスムーズにならない理由も解説します。

執筆当初は有料記事として考えていましたが、諸事情により無料で公開することにしました😍気に入った人は是非ともマガジンの購入をどうぞよろしくお願いします。

(約 4,000文字の記事です。)

更新履歴
2024/11/13 ローポリ限定の技であることを追記。
2024/10/26 公開

目次

1万ポリ以下のローポリで特に有効

Blender 4.2.3で検証。(なおBlender 4.3系ではスカルプト機能の刷新があったため必ずしもこの通りにはなりません。ご了承下さい。)

この設定は実はローポリでこそよく効く。逆に3万ポリ以上では素直にデフォルトのラプラシアンのままでいい。そしてハイポリこそラプラシアン変形でないとスムーズが効かない。

大和 司

なのでサブディビジョン・モディファイアを使っていて、元のメッシュがローポリの場合は「微妙な面のうねり」だけを除去するのに有効かもしれません。

デフォルトのスムーズは「体積が縮む」

一番の問題点はこれ!デフォルトのスムーズブラシでは必ず体積が縮むのだ😭なので、

  1. スムーズをかける
  2. 縮んだ分だけ膨らませる
  3. 膨らみによる面荒れが発生する
  4. スムーズをかける
  5. 以下、無限ループ

永遠にツルンとした仕上がりにならない。困った。

ラプラシアン変形は縮む運命

スムーズブラシの変形方法のデフォルト値は「ラプラシアン」になっている。ラプラシアン変形(Laplacian Deform)はどうやら原理上、縮むらしいのだ。

大和 司

スムーズブラシだけ使っているのに、どうして頭部がモリモリ凹んでいくんだ……?

こんなスムーズブラシでは使い物にならない。なぜ表面の荒れだけ取り去ってくれないんだ?凹ます必要はないのに。

サーフェス変形があるけど、何も起こらない

ラプラシアンからサーフェスに変えてみても何も起こらない。ナンダコレ?

あとオプションが増えているけど適当に変えてもよく分からない。

大和 司

Zbrushのスムーズブラシみたいに、ごく普通のスムーズをかけられないのか?

私も色々試行錯誤した結果、このサーフェス変形と適切なパラメータでほぼZbrushのスムーズブラシと遜色なく使えることが分かった😊以下ではそのパラメータと周辺知識について解説する。

ブラシオプションの別の表示方法

まずブラシのオプションは画面上のブラシからポップアップウィンドウを開くのではなくて、画面右のツール・プロパティから常時表示させて下さい。その方が1クリック節約できる上に快適です。

サーフェス変形のパラメータの肝「形状の維持」

ここでごちゃごちゃ説明するよりも答えの設定パラメータを先に解説する。そのあとでまずは各自でテストメッシュをスムーズにしてみれば体で分かると思う。そのあとで続きの解説を読むことオススメする。

まず試してみてほしい「基本挙動の理解」用パラメータ

  • 強さ:スライダ Max 1(キーボードから数値を入れればMax 10まで可能
  • 形状の維持:Max 1
  • 反復:Max 10

まずはこの設定で各自の荒れたメッシュを滑らかにしてみてほしい。

スムーズブラシの「本当の最大値は10」

強さ:Max 1と書きましたが、実はBlenderではスライダの右端が入力値の上限ではない「ことも」あります。例えば強さに10を打ち込んでEnterすれば、10倍の強いスムーズブラシを使えます。100でも1000でも、とは行かず、最大値は10で打ち止めみたい、スムーズブラシの場合は。(アイテムごとに各入力項目の上限は異なります。)

これこれ、こういうのでいいんだよ。

「形状の維持」のポイント

名前の通り、ここを1にするとBlenderはスムーズブラシの適用範囲の体積を一定に保ったまま表面の頂点位置を滑らかに移動させるようだ。結果、スザンヌの頭はスムーズブラシをいくらかけても凹んでいかない。

ただしここを1にするとハイポリほどスムーズブラシの効きが悪くなる。(ローポリほど影響を受けにくい。)

Zbrushでも超絶ハイポリではスムーズブラシが突然効きにくくなるように、体積を一定に保とうとするとハイポリほど演算量が増えるし、スムーズ化によって移動する頂点の「移動量が極端に少なく」なり、結果としてなかなかメッシュが変形してくれない、という原理上の制限がある。

それを補うために演算回数を多くするしかないので、反復回数をMax 10に設定している。形状の維持1と反復10、この設定がスムーズブラシの最大出力だと思っていい。あとはその出力の強度を0~10の間で決めるだけのことだ。

「頂点の移動」は0でいいの?

試してみれば分かるように、ここを1にすると「何も起こらない」。この項目の意味は、頂点の移動量を制限する、と言えば一番分かりやすいはずだ(厳密には違うが)。この値を大きくすればするほど、スムーズが効きにくくなる。

大和 司

逆に言えばスムーズ強度も形状の維持も変えずに、ここを少し大きくすることで、うっすらとスムーズをかけることができる。

だがあまり直感的ではない使い方になるから、そんな面倒をするよりも素直に強度を下げてスムーズする人がほとんどだと思う。

なので結論として、この「頂点の移動」は常に0で問題なし

3万ポリ以上の場合はトゲトゲになる?

この頂点移動が0の場合、ハイポリではトゲトゲメッシュに壊れる現象を確認。なのでこの技はどうやらローポリ限定の特殊技だと思ったほうがいい。

またBlender 4.3 Betaではアルゴリズムが変わったようで、ここは0.5のままのほうが正常に動作する。無理に0にする必要はない。(なおBlender 4.3系ではスカルプト機能の刷新があったため必ずしもこの通りにはなりません。ご了承下さい。)

さて、引き続きパラメータの解説をしたいところだが、Blender特有のスムーズブラシの「クセ」についてまず先に解説する。

連続ストロークよりも一筆書きを繰り返すべし!

Zbrushのスムーズブラシみたいに、ジグザグと軌跡を連続して描くようにスムーズブラシをかけることができない。これはBlenderのスムーズブラシの一つの特性だと思ってほしい。1ストロークごとにマウスボタンを離す、ペンタブを持ち上げる必要がある。

もう気付いたと思うが、連続してジグザグとストロークしていると、メッシュの表面がプニプニとかすかに上下動していることが分かると思う。Blenderがストローク領域の体積計算をリアルタイムで行なって、頂点位置をリアルタイムに変更しているからだ。1ストロークが続いている間中、Blenderは頂点位置をリアルタイムで変え続けている。1ストロークが長くなればなるほど、体積を均一に維持するために色んな頂点の位置が微妙に変わる。

その結果、1ストロークが終わるまで、ブラシエリアに含まれる頂点位置が変動し続けて頂点位置が確定しない。だからストロークしている間中、ブラシエリア内の頂点が微妙に波打つ。これはこれで気分が悪い。

これを回避するためには1ストロークを細かく分断させるしかない。

実はクリックのほうが楽

あるいはクリック操作によってスムーズをかけることもできるストロークせずに3, 4回クリックして試してみてほしい。スムーズブラシ領域内の頂点がスムーズ化されるはずだ。

Blenderのスムーズブラシはクリックでも使える

必ずストロークする必要がない。クリック操作を繰り返してもスムーズ化できる。

ん?だったらブラシの直径を大きくして、なるべく対象メッシュをブラシ領域内に入れて3, 4回クリックしたほうが一気にスムーズ化できるのでは?Yes!その通りです。

スムーズ化のアルゴリズムが違うようで、Zbrushみたいにゴシゴシとこする必要がない。というかゴシゴシこすっても何も変化しない。1ストロークごとに変形が確定するので、ボタンプレスからボタンリリースまでで1回変形が確定する。

なので滑らかにしたい箇所が円形ならば、ブラシの直径内に配置してマウス3~5回クリックでほぼ滑らかになってしまう。

ズームアウトしてブラシの直径内にスザンヌを入れ、5回ほどクリックした結果。ツルンツルンになった。

Zbrushのようにゴシゴシすればいいというものではない。このサーフェス設定では無意味。

あと触ってみれば分かるが、2~3回が変形の限度で、それ以降何度ストロークを重ねてもほとんど大きく変形しない。そして2~3回の適用でほぼツルンとする。

でもそれでも荒ぶりが収まらない場合、次のパラメータを試してみてほしい。

「形状の維持」を0.9などに少しずつ下げて試す

形状の維持の値を下げていくと、スムーズ変形で小さくなっていく。最初のラプラシアン変形に戻っていく。どうしても面の荒れが取れない場合はこれを試すといい。ただしあまり値を小さくすると最初の問題に戻ってしまうので、各自で加減してみること。

大和 司

あとは普通にブラシで盛ったり削ったりしたほうが早いかもしれない。面の荒れではなく面の凹みならスムーズブラシで直すべき変形ではない。

Zbrushの場合はチカラ技でスムーズブラシでゴシゴシすればちょっとの凹凸は平均化されて消えてなくなるが、Blenderの場合はそれは通用しない。面荒れを取るか、面荒れが直った後に本来の形状を整えるか、の2択。

こういう点を考えても、Blenderで数千万ポリのスカルプトは向かない。素直にZbrushを検討したほうがいいだろう。

だが逆に数万ポリ程度であればBlenderのサーフェス変形のスムーズ化能力は高いと思う。2, 3クリックで面荒れは直る。

まとめ

BlenderでもZbrushのような普通のスムーズブラシが使えることが分かった。

  • 1万ポリ以下のローポリで形を保ったままのスムーズ化に特に効く
  • デフォルトのラプラシアンではなくサーフェスに切替える
  • 基本は形状の維持を1、反復を10とする
  • 強さは実は10までセット可能
  • 形状の維持は少し値を下げると変形力を高められるが、体積は縮む
  • 1ストロークを短く区切ること
  • 超絶ロングストロークでも1ストローク分の変形しか起こらない
  • クリックでもスムーズ化できる
  • スムーズ化後でも取れない凸凹にはスカルプトで整えよ
大和 司

1万~3万ポリの滑らか化にはBlenderのサーフェス変形のスムーズ化に便利。3万ポリ以上はデフォルトのラプラシアンでOK。

これでローポリ時でもZbrush並の操作感のスムーズブラシが手に入った。

今回の創作活動は約2時間30分(累積 約3,976時間)
(998回目のブログ更新)

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