このマガジンはBlenderを使ってキャラクターを素早く快適にモデリングするための解説集です。今まではBlenderでは苦手とされていたサブディビジョン・モデリングを実務レベルで利用するための実践的なワークフローを解説しています。
当手法は人体のモデリングの他にも、衣装や帽子、靴といったソフト~セミソフトな小物から、剣や盾、防具や杖などハードサーフェスな工作物の小物作成にも大いに役立ちます。応用範囲がかなり広いことが特徴です。
またスフィアなどのゼロベースから素体を作ることよりも「既存のベース素体」を加工して素早くオリジナルキャラクターを作りたい人にこそ有効な手法です。モデルを作り上げるというよりも「モデルを素早く改造したい」人にこそ最適です。
なお表現したい人物モデルによってはフィギュア原型製作用途に活用できる「場合も」あります。しかしながらどうしてもハイポリモデルが必要な人物モデリングには適さない場合もあります。当マガジンの無料記事をお読み頂いた上でご判断をお願いいたします。
更新履歴
2023年12月25日 カーブとメッシュ表現を追加。記事を一部メンテ。
2023年12月25日 カーブとメッシュ表現を追加。記事を一部メンテ。
2023年12月9日 スカルプト手法の制限を修正。
2023年12月04日 執筆。
学習内容
- ローポリ・ミドルポリのキャラクターモデルの素早い加工方法と、Blenderでのハイポリモデルのスカルプトモデリングについて学びます。
- サブディビジョン・モデリングとシェイプキー変形による「いつでも可逆なスカルプト変形量の調整」を両立することができます。
- サブディビジョン・モデリングでは通常は困難な「いつでもメッシュのトポロジ構造を変更可能」であり、その場合でも既存のシェイプキーを維持できます😊
- 既製モデルのディティールを損なうことなく大きな形状変更を素早く行えるようになります。編集可能な静的メッシュを基本とするので外部ツールとの連携が容易です。
対象者
- Blenderを使ったことがある人(基本操作が分かっている人、知らなくても自力で調べて解決できる人)
- VRChat, Cluster, MMDキャラクターモデラー
- Unity, UE5用のゲームキャラクリエーター
- Zbrush以外のモデリング手法を探しているフィギュア原型師
必要なもの
- Blender 3.6.x と 4.0.x をDLして使える状態にして下さい。
(基本的にBlender 4 系で説明しますが、アドオンによっては未対応なため3.6系で解説することもあります。) - 投稿記事によっては有料のアドオンが必要になります。
必要に応じて各自で有料アドオンを用意して下さい。記事によってはそのアドオンが使える事を前提として解説している場合があります。
本手法の特徴
本手法の特徴は以下の通り。
- シェイプキーを維持したままいつでもベースメッシュのトポロジ変更が可能
- スカルプト変形をシェイプキーに保存し、いつでも自由にスカルプト量を変更できる
- Blenderが苦手とするサブディビジョン・モデリングのある程度自由な往復
- サブディビジョン・モデリングで重要になる中間レベルのメッシュ操作できる
- 「静的ハイポリメッシュ」と「細分化系モディファイア+ミドルポリ」のいつでも可逆な変換(条件あり)
- クリース制御+サブディビジョン・モディファイアによる滑らかエッジの制御
- カーブを用いたメッシュの生成と可逆的な形状制御
あぁ……、言葉で説明するととても伝わりづらい😭
記事執筆が進み次第、各記事で紹介した動画ファイルなどを挿入してこのページを視覚的に分かりやすく変更する予定です。
今はまだ素材がない……😱
できるようになること
上記の特徴を生かすと、以下のようなことが簡単にできるようになります。
Blenderに特化したサブディビジョン・モデリング手法
- ベースメッシュのトポロジ構造の変更がいつでもできる
- シェイプキーに保存したスカルプト結果を維持したまま、ベースメッシュのトポロジ構造の変更がいつでもできる!
- ハイポリメッシュを維持したまま、サブディビジョンの中間メッシュを操作できる(マルチレゾ・モディファイアを使わない手法) ※操作方法に制限あり
- つまり細かい彫り込みや作り込み部分を維持したまま「大きく形状変更」できる(足腰周りや胸・肩周りのボリュームの美&微調整など)
- スカルプト・モデリングによる細部の彫り込みをシェイプキーでいつでも何度でも変形&調整できる
- (当然ながらリグ変形によるポージング変形がいつでも何度でも可能😊)
- サブディビジョン・モディファイアによる動的な滑らか表現なのでミドルポリでも十分滑らかに表現できる
- ハードエッジや滑らかな凹凸をクリース値で制御するので形状をいつでも動的に変更できる。
- 結果、ミドルポリを維持したままハイポリ相当の滑らかな表現が可能 ※形状によっては制限あり
カーブによるメッシュ表現
- カーブオブジェクトを使った柔軟なメッシュの作成
- カーブを用いた動的なメッシュによる「いつでも可逆にメッシュを変形、移動、再配置、差し替え」が可能
スカルプト手法には制限があります
BlenderはDCCツールであり、スカルプト特化型ツールではありません。そのため本手法におけるスカルプト・モデリング可能な四角ポリゴン数には制限があります。
No. | シェイプキー変形 | サブディブ モデリング | スカルプトの ポリゴン上限 |
---|---|---|---|
1 | しない | しない | 約800万ポリ |
2 | 利用 | しない | 約50万ポリ |
3 | 利用 | 下1段のみ | 約12万ポリ |
4 | 利用 | 下3段、 上1段まで | 約4~5万ポリ |
1オブジェクトあたりのポリゴン上限です。キャラ全体の複数オブジェクトの総合計ポリゴン数ではありません。なのでもし1メッシュで超絶ハイポリであってもそのメッシュを複数のオブジェクトに分ければ、この条件内でPC能力の上限までBlenderで作業できます😍希望があります!
加えてモディファイア関連の詳細な説明はこちら。
- シェイプキーを利用しない純粋なスカルプトメッシュの場合は1オブジェクトあたり約800万ポリ(モディファイア未使用時)
- シェイプキーによるスカルプト変形を可逆に利用し、サブディビジョン・モデリングを行なわず、スカルプトのみを行なう場合、約50万ポリ(モディファイアは未使用または無効化状態で作業する場合)
- シェイプキーによるスカルプト変形を可逆に利用し、静的メッシュに対して下1段のみのサブディビジョン・モデリングをする場合は、約12万ポリ(一部のモディファイアが常に必須なので、処理が重いゆえの制限)
- シェイプキーによるスカルプト変形を可逆に利用し、サブディビジョン・モデリングをする場合は、静的メッシュに対して上1段~下3段までのサブディブ・モデリングが可能な場合で約4~5万ポリ
❌ 本手法ではできないこと(向かないこと)
上記の通り、ハイポリが前提の作業はできません。
❌ ハイポリ前提のスカルプト・モデリング
要するに、以下に該当する人には当手法は向きません。
- ネバネバ・ギザギザといったでこぼこ系のクリーチャーを作りたい人
- デジタル粘土が欲しい彫刻家
- ドラゴンのうろこや鳥の羽のような繰り返し表現を1メッシュで表現したい人
- ボディビルダーの肉体美を彫刻で表現したい人
より詳細な具体例としては、
- 何千万ポリ、それ以上が必要なハイポリ・スカルプト
- それを前提としたサブディビジョン・モデリング
- ハイポリなスカルプトを前提としたVMDブラシやマスキング+スカルプトによる造型
- うろこや鳥の羽などのような繰り返しパターンをメッシュ表面に形作るモデリング
- 毛穴が見えるほどの高精細スカルプト
- ボディビルダーの筋肉の質感や浮き出た血管など、ミドルポリ+トポロジだけでは表現が難しいディティールを表現したい場合
- 3Dスキャン結果やデシメート結果のメッシュなど、元々が四角ポリですらない三角ポリだらけのメッシュ。(ただし元が四角ポリで作られたものが三角ポリ化された場合には、四角ポリに戻すことができれば対応可能。)
❌ 純粋なサブディビジョン・モデリング
他に、複数レベルのサブディビジョン・モデリングにおいて中間レベルのメッシュの精密な操作が必要な場合も向きません。例えば7段階のサブディブ・レベルがあるとして、3段目と6段目のメッシュの頂点だけを数値指定で精密に操作したい場合のように、中間レベルのメッシュを精密に制御するワークフローには向きません。
当手法では美術目的でおよそ感覚的に制御することは可能ですが、CAD的に数値でキッチリと中間レベルのメッシュを制御することは仕様上できません。
元々Blenderは中間レベルを操作するサブディビジョン・モデリングを想定していないようです😖
⭕ 上記に該当しない場合には便利!
上記のように、ハイポリ必須でもなく、サブディビジョンの中間で「形状を大まかに変更させるだけがよくて」「細部は部分的に細かいメッシュだけでOK」な場合であり、基本的に滑らかな形状が多く、形状の凸凹の山と谷にエッジを配置できるローポリ・ミドルポリ主体でいい人、そういう人には当手法はかなり便利にモデリングできます😊
これは恐らくはVRChatやCluster, MMD, UnityやUE5などのゲームキャラ作りにほぼ当てはまると思います。ですのでここまでの説明でご自身が作りたい物が当手法のNG内容に当てはまらなければ、当手法は快速にモデル作成やモデル改造ができます。
実践的な作例は全記事執筆後に追加予定
各章で本当は実践的な作例集を作りたいところだが、諸事情により今は作例を省略しています。詳細はこちら。まずは前編の技術解説を最初に一通り終わらせることを優先するためです。ご理解頂ければ幸いです。
あとは当マガジンの無料記事や有料記事の見出し部分を見て判断してください!
どうかこのマガジンが多くのキャラクターモデラーのお役に立ちますように。
気に入った人は是非ともご購入をお願いいたします😊
大和 司