このマガジンは「PMXエディタではなくて」BlenderでMMDモデルを改造するためのヒント集です。Blender+MMD Toolsアドオンでモデル改造を行なうための実践テクニックを集めました。
(約 3,100文字の記事です。)
更新履歴
2024/11/18 記事をメンテナンスしました。
2024/11/18 記事をメンテナンスしました。
2024/11/06 記事をメンテナンスしました。
2024/10/30 記事をメンテナンスしました。2024/10/14 記事をメンテナンスしました。
2024/10/10 Blender 4.2をメインにすることを追記。
2024/04/21 更新
2024/04/17 公開
学習内容
- BlenderとMMD ToolsとPMX形式の仕様の違いを詳細に解説
- 頂点モーフ、材質モーフ、UVモーフの編集とMMD Toolsへの登録方法
- それらのモーフ編集に関する様々なヒント集
- Blenderを使ってMMDモデルを改造していきます。ゼロから作り上げる「セットアップ」ではないので初心者に優しい内容です。
- 9割以上をBlenderで作業します。Blenderでは操作不可能な作業でのみ各自でPMXエディタをお使い下さい。なお必須作業ではありません。
- MMDモデルを題材に作業しますが、身に付く知識は3DCGモデリング作業に応用できます。
- Blenderの操作方法に関する解説はほとんどありませんのでBlenderの基礎知識は各自で学習して下さい。
なぜPMXエディタではなくてBlenderなのか?
Blenderの方が3DCGの一般的なDCCツールであり、MMDモデル編集のノウハウがそのまま3DCGモデリングスキルに直結するため、将来的な応用範囲がPMXエディタよりもかなり広いと判断したため。
理由はいくつかありますが、ユーザー目線で考えた場合に以下の違いがあります。
PMXエディタのメリット・デメリット
PMXエディタのメリットとしては、
- MMDとの相性がいい(当たり前)
- 一部の編集はPMXエディタでしかできない(例えばSDEFウェイト塗りなど)
- (SDEFについてはXISMOでできたらしい(未確認)が、DLサイトが機能していない)
- 有志のプラグインによる剛体&ジョイントのセットアップの半自動化
ただしデメリットとしては、
- PMXエディタはMMD専用なので、独特の使い方のクセがある
- 有志によるプラグインによって色々な機能拡張がされていて便利だが……。
- そもそもMMD自体の開発が止まっているため、将来的な応用性は絶望的
- ニコニコのユーザーブロマガが2021年でサービスを終了し、MMDやPMXエディタに関するノウハウの多くが消失したため、今後の復活は厳しめ
- PMX形式は一般的な3DCGモデルと比較しても「独特な実装」が多く、初心者が3DCGを学ぶ上で混乱しやすい
- そもそも3DCGツールとしてメッシュの編集や取り扱いがしやすいわけではない
要するに「学習コスト」が高い割に手に入るスキルが完全にMMD専用スキルに限定されてしまう点が最大のデメリットです。
Blenderで一般的な3DCGキャラクターモデリングの基礎を学ぶ
これに対してBlenderでMMDモデルを取り扱うメリットは以下の通り。
- 一般的な3DCGソフトのDCCツールとして十分な機能を備えている
- PMX形式のモデルであっても一度Blenderにインポートできればあとは普通の3DCGキャラクターモデルの取り扱いと同じ手法で編集できる
- VRChatなどのキャラクターモデリング編集に応用できる
- 身につけたメッシュ編集技術やテクスチャリング、シェーダーノードの取り扱いの知識はそのままMayaなどの汎用的な3DCGツールに生かせる
- モデリングツールとして必要な多くの機能を備えているため、モデリングしやすい
- 表情モーフなどのシェイプキーの取り扱い方法の習得は応用範囲が広い
- ボーン、ウェイト調整などのノウハウが一般的な3DCGモデリングに生かせる
- Blenderは現在進行形で開発され続けていて、プロも使い始めているツール
要するに、3DCGモデリングでMayaなどのような一般的なDCCツールと同じ機能が使えて、その学習知識は他のプロ用ツールにも応用できるため、将来的に応用範囲がグンと広がります😍
なおBlenderでMMDモデルを編集するデメリットはわずかにですがあります。
残念ながらBlender+MMD Toolsではできないこと
- SDEFなどの特殊な機能の編集ができない(現状ではほぼPMXエディタ一択)
- 一部の表情モーフの並べ替えができない(回避策あり)。厳密にやるならこれもPMXエディタでないとできない
あと個人的な理由としてはPMXエディタは商用利用不可であるため、当マガジンでは扱いたくない、という事情もあります。ですので当マガジンではPMXエディタのスクショは登場すらしません。解説も必要最小限です。
PMXエディタを使わないことで改造の繰り返しが楽になる😍
PMXエディタで編集してBlenderに戻すと、多くの作業がやり直しになるのです。これがつらい😭
PMXエディタを介さないことのメリットは、PMXインポート後の下処理の繰り返しが不要になることです😊
BlenderでMMDモデルを編集し、再びPMXファイルに戻す。ここまではいいのですがもしここでPMXエディタで編集した後で、再びBlenderにPMXファイルをインポートすると、ほとんどの作業でPMXインポート後にやる下処理作業が全部やり直しになります。例えば、
- せっかく1つのメッシュに頂点結合したのにまたUV島の全部バラバラな分離メッシュに戻る
- せっかく三角ポリを全て綺麗な四角ポリに変換したのにまた三角ポリに戻る
もしPMXエディタを使うならば「もうBlender編集に戻せない」と考えるか、あるいは「もう一度Blenderにインポートして下処理を全部やり直す」か。いずれにせよ、作業効率はがた落ちです。
もし「これでモデルは完成だ!」と思ってPMXエディタで仕上げても、数日したら「やっぱりここを修正したい!」となるはず。そのたびにBlenderにPMXをインポートして、お決まりの下処理を繰り返すことになります😭
だったら全部Blender完結にして、Blenderから直接エクスポートしたPMXファイルを完成型として運用すれば、次回の改造でもBlenderでの直接編集からスタートできます。スマートな編集作業になります😊
PMXエディタを介さないことのメリットは、
この「継続的な改造」の繰り返しが楽なこと
なのです😍
当マガジンの対象読者
既存のMMDモデルのダンスを眺め、改良したい人
既存のMMDモデルについて、
- メッシュの形状変更、トポロジ変更
- 頂点モーフの追加と編集
- 材質分離と追加
- ウェイト調整
これらをBlenderで操作する方法を解説します。
対象読者
- 既にMMDファイル(.pmm)を再生できる環境がある人(ソフトのインストールなどからの解説はありません)
- MMDモデルの形を変更したい人
- MMDモデルにオブジェクトを追加したい人
- MMDモデルのモーフ変形を追加・変更したい人
- MMDモデルのトポロジ変更したい人
- Blenderの基本的な知識がある人(Blenderの使い方の解説はありません)
MMDソフトで既存モデルを読み込ませて、ダンスモーションを再生できる状態にできていることを前提としています。「ソフトをどこから手に入れるの?」というレベルから解説していません。Google検索などですぐに調べられますのでそちらをご利用下さい。
今までBlenderを全く触ったことのない初心者向けではありません。その場合には書籍などでBlenderの基本操作を習得してから当マガジンをお読み下さい。
解説しない内容
なお以下のような人には向きません。
- 剛体とジョイントを編集したい人
- Ray-MMDなどのレンダリングを追求したい人
- Blenderでダンスムービーを作成したい
- 背景を含めた動画作品をを作りたい人
- トゥーン表現や線画表現を追求したい人
上記内容については解説する予定がありません。理由としては以下の通り。
- 剛体やジョイントはMMD限定の物理演算に関わる。習熟してもMMD以外のソフトへの応用性が低いため。MMDソフト本体はアプデが絶望的なのでソフト本体に習熟してもノウハウを他に生かせないため、学習コスパが悪すぎる。
- Ray-MMDなどによる美麗でリアルな表現もMMDソフト依存であり、そのノウハウはRay-MMD限定なのでノウハウを他に生かせないため。
- Blenderでのダンスムービー、これはBlenderでの物理演算に習熟する必要がある。それだけでも学習量が膨大になるため当マガジンでは手に負えない。
- 背景を含めた動画作りはそれだけで一つの分野になるほど広くて深いテーマ。なので当マガジンでは手に負えない。
- いわゆるアニメ調の表現は、これまた一つの分野になるほど広くて深いテーマ。なので当マガジンでは手に負えない。また線画表現についてはこれまた広くて深いテーマ。最先端のプロでもそれを効率よく作成するための研究が進められているほど。当然手に負えない。
要するに当マガジンでは「MMDモデルのメッシュ編集、頂点モーフとマテリアルモーフ編集に特化」しています。
必要なもの
- Blender 4.2.xと3.6.x
- MMD Tools アドオン
- MMD本体
- (学習者にとって必要ならPMXエディタがあるといいかも。)
記事の内容によっては有料のアドオンが必要になる場合があります。
必要に応じて各自で有料アドオンを用意して下さい。記事によってはそのアドオンが使える事を前提として解説している場合があります。
本手法の特徴
本手法の特徴は以下の通り。
- ほとんどの編集作業をBlenderで行ないます。
- PMXエディタは使いません。(各自で必要に応じて個人でお使い下さい。)
- 材質分けや頂点モーフ、マテリアルモーフ、UVモーフ、モーフグループの編集、隠しモーフ化などもBlenderで行ないます。
- モデルに自作の新しいオブジェクトなどの追加も行えます。
当初はPMXエディタでないと編集できないと思っていたことの多くが、実はBlender内でMMD Tools経由で編集できることが分かりました👍そしてこのマガジンを執筆することにしました。
MMD Toolsでできないことの代表例:ウェイトの種類をBDEFからSDEFに変更できない。このSDEFに関わる編集だけはPMXエディタが必要です。
他にもモーフの並び順を任意の順番にできない。MMD Toolsから出力されると頂点モーフ、マテリアルモーフなどモーフの種類順に強制的に振り分けられる。任意の並び順に並べ替えるのにもPMXエディタが必要です。(ただしモーフの並び替えにはMMD Toolsで対処方法あり。)
MMDを通じてキャラクターモデリングの基礎を身に付ける
そこでMMDムービーやMMDモデルの観察・改良を通じて、普遍的な3DCGキャラクターモデリングの基礎力を「MMDを楽しみながら身に付けられる」ように当マガジンを執筆することにしました。
ゼロからキャラクターモデルを作るのはとても大変です。ですが既存のMMDモデルであればすぐにダンスさせられます。また自分が気になったところを改良したり編集したりすることで自然とBlenderの操作方法とキャラクターモデリングに関する知識を増やせます。そうやって3DCGに慣れていけば、自然とフルスクラッチでゼロからのオリジナルキャラクターを作ることができるようになるでしょう。
大切なことは「楽しみながら3DCGに慣れること」です。
まずはMMDを楽しみましょう。MMDモデルをたくさん観察しましょう!😍
どうかこのマガジンが多くのMMDユーザーのお役に立ちますように。
気に入った人は是非ともご購入をお願いいたします😊
3DCG テクニカル インストラクター
大和 司