前回の記事では当手法のサブディビジョン・モデリングの特徴と、ローポリ、スカルプト操作の習得、ミドルポリでの編集モードの技量の大切さなど、割と色んなテーマをサラッと解説した。
今回は、このように割と制限も多い中で、それでもこの手法を採用するメリットについて解説します。
更新履歴
2024/01/17 公開。
(約 2,700文字の記事です。)
前回の復習
要するに、前回の内容はこんな感じ。
- ディビジョンレベルを作る手順が逆だが、その後のワークフローは基本的なサブディビジョン・モデリングと同じ
- 編集モードでは静的メッシュのミドルポリを操作することになる
- 中間レベルはスカルプトモードでしか操作できない
- サブディビジョン・モデリング中は精細なスカルプト造型ができない(PC負荷に依存)
Blenderでのサブディビジョン・モデリングはこのままでは「あまりメリットがない」ようにも見える。仕様上の制限が多いのだ。
それでもこれを補って余りある強力な機能がBlenderにはあるのだ😊
ベースメッシュのトポロジ変更が自由!
当手法ではベースメッシュのトポロジ構造をいつでも何度でも変更可能。これは一般的なサブディビジョン・モデリング手法ではまずあり得ない。
☕ Zbrushのサブディビジョンのフリーズと解除
Zbrushの場合はサブディビジョンのフリーズと解除でジオメトリ構造の変更に対応しているが、ときどきこのフリーズ解除に失敗することもある。そうなるとトポロジ変更作業が全滅する上に、次に進めなくなるので困ることもある。それが「ごく稀に起こる」のがまた困る。祈りながら使うのは辛い。
上記のようにトポロジ構造変更のみなら(不安はあるものの)Zbrushでも対応している。だがZbrushの場合はレイヤー機能を利用している場合にはそもそもジオメトリ構造の変更を受け付けてくれない。Zbrushユーザーは試してみれば分かる。
だが当手法では、なんとシェイプキーがある状態でもそれを維持したまま自由にトポロジ構造を変えられる😍これが驚異的なのだ!
この動画ではエッジループの挿入と、テストとしてナイフツールで斜めカットを追加してみた。念のため頂点表示モードでも確認している。
あと動画では示していないが、頂点結合やエッジの削除など、オブジェクトの3要素(頂点、辺、面)を減らす編集をしても既存のシェイプキーは正常動作する。お試しあれ😊
過去にシェイプキーを登録したあとでも、いつでもトポロジ構造を変更できるのだ!なのでかなり自由にベースメッシュ変更とスカルプト量の微調整を行える!
シェイプキー+リグポージングの組み合わせ
Blenderなので当然リグ&ボーンによる可逆なポージングが可能だ。リグポージングにスカルプト(または編集モードで)変形したものをシェイプキーに保存し、いつでも可逆に再現できる。両者を組み合わせると例えばこんな具合になる。
この例ではリグ入れ後のメッシュに対して、スカルプトをシェイプキーに保存し、更にトポロジ構造を変更した(複数ループエッジとナイフカットを追加)。その上でリグポージングによって曲げを加え、各種のシェイプキーの値を変更して見せている。これらの組み合わせはいつでも何度でも変更可能だ。
このポテンシャルの高さ、これを手に入れるために、サブディビジョン・モデリングでの各種制約がある。これらが全部使えた上にサブディビジョン・モデリングが使えるわけだ。ほぼ全部入りといっていいだろう。
そしてもしサブディビジョン・モデリングのディビジョンレベルの上げ下げが不要な工程まで進んだら、サブディビジョン・モデリング手法を打ち切る。そすれば1オブジェクト最大5万ポリの制約から解放される。
サブディビジョン・モデリングを打ち切った場合でも、リグポージングとシェイプキーの可逆性を保ったまま、1オブジェクトあたり12万~50万ポリまで上げられる😍スカルプトで形を追い込むのはこの段階でも遅くはない。最終的に純粋なスカルプトのみならば1オブジェクト800万ポリまで上げられる(これはPC性能に依存する)。
No. 2, 3をご覧下さい。
No. | シェイプキー変形 | サブディブ モデリング | スカルプトの ポリゴン上限 |
---|---|---|---|
1 | しない | しない | 約800万ポリ |
2 | 利用 | しない | 約50万ポリ |
3 | 利用 | 下1段のみ | 約12万ポリ |
4 | 利用 | 下3段、 上1段まで | 約4~5万ポリ |
1オブジェクトあたりのポリゴン上限です。キャラ全体の複数オブジェクトの総合計ポリゴン数ではありません。なのでもし1メッシュで超絶ハイポリであってもそのメッシュを複数のオブジェクトに分ければ、この条件内でPC能力の上限までBlenderで作業できます😍希望があります!
当手法のSubdivモデリングのワークフロー
全体的な流れは以下のようになる。
- ローポリ素体の準備
- サブディブ1~2段の適用で静的メッシュ化し、デシメート・モディファイアをセット
- ローポリ側から形を整えていく(サブディビジョン・モデリングの実行)
- 中間レベルをスカルプトモードで整える
- 必要に応じてシェイプキーに変形情報を保存
- リグポージングなどで「完成ポーズで必要なトポロジ構造」を確認
- 必要に応じてトポロジ構造を修正
- トポロジ構造がほぼOKになったら、ディビジョンレベルを更に上げる(静的メッシュの密度を1レベル上げる)
- この繰り返しでポリゴン密度を上げていく(PC性能の上限まで可能)
- 場合によってはポージングの微調整など
- フィギュア原型用途ならリグ変形の破棄(アーマチュア・モディファイアの適用)
- 細部をハイポリで彫り込んで仕上げる
- 完成
1から8まではワークフローの中で自由に色んな項目を変更可能だ。8~10で細部を詰めて仕上げていくことになるだろう。そして最終的にはモディファイアなしでシンプルにスカルプトで形を出せる状態なので、数百万ポリのスカルプトができる。ハイポリ状態ではもはやスムーズシェードONで1レベル上の表現になるので、実はそこまでハイポリにしなくても十分高精細な結果を得られる。
可逆性こそがBlenderの強み
スカルプトをシェイプキーに保存し、ポーズをリグで変更し、ジオメトリ構造の変更すらもいつでも可能な上に、サブディビジョン・モデリングが使える。これがBlenderのポテンシャルだ。しかも無料な上に、当マガジンでもここまでのコア技術を無料記事として公開した。
ここまでの記事で当手法におけるサブディビジョン・モデリングのコア技術の全てを無料で公開した。ここまでで得た知識+Blenderがあればあとは各自で試していくことができるはずだ。
さすがにそこからは有料記事になります。もし興味のある人は是非ともマガジンをお買い上げ下さい~!💰
今回の創作活動は約2時間45分(累積 約3,720時間)
(963回目のブログ更新)